ZAKIOLOGY

学ぶ楽しさを探求する

【書評】何もしないほうが得な日本 (太田肇 著)

 

タイトル見て、なかなか面白そうなタイトルだなと思って読んだ。

 

なんとなくわかっていたことを言語化してくれる本ってあまりないのだけれども、この本はそういう類の本。

 

なんとなーく、意識せずに生きているのだけれど、なんか違和感みたいなものはある。

なんでなんだろうなー。とは思うけれど、

なかなか言語化しづらい違和感。

 

その違和感にスポットライトを当てて解説しているのが、この本。

 

消極的利己主義っていうワードにかなり共感した。

 

たしかに、日本人って消極的な利己主義に陥ってる。

 

誰も責任をとろうとしないし、誰も波風を立てたがらない。

お互いがお互いを監視しあっていて、

その監視ゆえに、めんどうなことを避けたがる。

 

昔の村社会的な同調圧力は今も健在だし、

SNSというツールによって、その圧力は強まったのかもしれない。

 

この本の中で、別の言い方がされている。

 

消極的な機会主義

機会主義っていうのは、個人が置かれた状況を利用して利益を追求すること。

 

この機会主義は、とりあえず現状維持して、利益を最大化しよう。という思惑。

 

転職しようか悩んでるけれど、

とりあえず今は転職せずに、会社にしがみついておこう。

みたいな感じである。

 

将来的には独立したいけれど、

どうしていいかわからないから、

とりあえず就活しておこう。

っていうのも機会主義的か。

 

 

だいたいの進路選択において、

今の時代、消極的な理由しかない。

 

とりあえず、

とか

別によくわからんけど、

とか

そういうのが多い。

 

ちょっと抽象度を上げてみると、

全部の姿勢に共通するのは、

とりあえず大人しくしておこう。

だと思う。

 

大人しくしておけば、

集団から逸れることはないだろう。

っていう思惑。

 

たしかに、周りを見渡しても、

おとなしい性格の人ばかり。

僕も大人しくなってしまった。

 

それでも大人しくしていられなくなって、

ブログを書いているようなところもある。

(わざわざ実名で)

 

でも沈没することが予測される船にみんなで乗り込んで、その沈没する様子を傍観しながら一緒にしずんでいこうとしているのが、今の日本人の現状だ。

 

今の傍観主義では間違いなく悪くなるのはわかっているのだと思う。

でも幼少期からデフォルトに刷り込まれた行動規範の中で自縄自縛になってしまっている。

 

そんな感じがしてならない。

 

沈没する船からイチ抜けるやつは、勝ち組。

沈没する船にしがみつくしかないやつは、負け組。

そんな価値観が今の若者にはあるのではないか。

沈没する船からイチ抜ける手段として、

ユーチューバーが礼賛されるのではないのか。

 

日本は一度、全部ぶっこわれてしまえばいいとすら思う。

構造的欠陥もすべて壊れてゼロの状態にもどればいいのに、と思う。

 

壊れてしまえばいいのに。

は消極的か。

壊してしまえばいい。

のほうが積極的なのだろうか。

 

なんとなく暗い感じになってしまう。

日本は間違いなく構造的欠陥を抱えている。

でもそんなスケールを動かせるほどの力はない。

そこに絶望するしかない。

 

でも、この本にはちゃんとこれからどうするかまで書いてある。

個人に向けてというより、社会全体に対して。

 

社会全体に対してではなく、個人的な対策も必要ではあると思う。

個人の意識は個人で変えるべきだからだ。

まず、個人として行うべきは、本を読むこと。

社会について、ちゃんと知ること、直視すること。

そして、ちゃんと絶望すること。

 

絶望から始まった希望しか信じないこと。

 

まあ、最終的には、組織にしがみつくのもやめればいい。要は精神的におこちゃまな部分をなくしていくことだ。

 

ということで、オススメしておく。