ZAKIOLOGY

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【書籍レビュー】姉と弟の関係性をえぐり出す名作  西加奈子 著「サラバ!」

こんにちは。

おざきです。

今回は、サラバ!について書いていこうと思う。

 

サラバ! (上) (中) (下)巻セット

サラバ! (上) (中) (下)巻セット

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非常に泣いた。

久々に泣いた。

ここまで泣いた小説はいつ以来だろうか。

 

サラバ!を知ったのは、たしか中学のときだったように思う。

サラバ!直木賞を受賞したことは今でも鮮明に覚えている。

それで、姉がサラバ!を読んでいたのだった。

僕にとって、姉の存在は非常に大きかった。

なぜなら、僕は中学生だったからだ。

中学生の住んでいる世界などたかが知れている。

要は、家族や中学校という世界の中でしか生きていなかった。

そんな狭い世界で大きな影響力をもっていたのが姉だった。

僕は姉が怖かった。

いつもいつもびくびくしながら生きていたように思う。

ただ、僕も僕なりにマイペースで、いくら姉にいびられようとも、自分のしたいようにしていた。

このサラバ!に登場する貴子ほどではないにせよ、

弟にとって姉という存在は脅威でしかない。

よくある話だが、兄弟において年下はうまく立ち回る。

それはあらゆる話に登場する。

たとえばスケットダンスのスイッチの兄弟もそう描かれている。

弟や妹は、常日頃から姉や兄の失敗を見て育つ。

そして、姉や兄が怒られているのも多く見ることになる。

その結果、自分の中に怒られないためのデータベースが蓄積されていくのだ。

それに加え、弟や妹は年下ということもあり、可愛がられる。

そうすると、姉や兄は嫉妬してしまうものだ。

「なんで弟ばっかり可愛がって、私を見てくれないの?」

そういう思いを抱いている姉は多いように思う。

実際に、姉と母の喧嘩を振り返ってみると、たいてい僕が可愛がられていて、姉が無碍にされているという論点だった。

僕は姉がいい意味でも悪い意味でもわがままなのに対して、

良い子ちゃんを演じるのが上手だったのだ。

しかも、子供の場合、それを無意識のレベルでこなしていることが往々にしてある。

姉の機嫌が悪いとき、姉がかんしゃくを起こしたとき、いかにして自分の気配を消すかを身につけていたし、姉に辟易した大人たちを笑顔にする方法を知っていた。

 

このようにサラバ!の中では書かれているが、それに近いことを僕も知っていたしやっていたのだと思う。

ここまで言語化してはいなかったが、たぶん無意識のレベルで心得ている。 

このような僕の経験とも照らし合わせながら読んでいた。

 

姉と弟という関係はよくわからない。

姉という生物は僕にとって理解不能な部分が多々あるし、

僕にとっての非合理が姉にとっての最適解であったりすることも往々にしてある。

 

僕がこんなに冷静に姉との関係について考えられるようになったのは、

一人暮らしを始めてからだ。

実家にいるときには気づかなかったことがたくさんある。

実家にいると近すぎて見えづらいものが、

一人暮らしを始めたことでピントが合ってきた。

 

僕と姉は意外と今のような距離感が適切なのではないか。

本当にそう思う。

人間関係には良い距離感というものが存在している。

姉と弟という関係性において、どんな距離感が適切なのかは正直人によるところが大きいだろう。

 

いまだに、実家に帰ると姉と険悪なムードになるし、

前は本当にヒドかった。

実家に帰って、かけられた一言目が「うるさい」「帰ってこなければよかったのに」

だった。

 

まあ、僕にも非はあるが、実家に帰ってきて開放感を味わうくらいのことは許容してほしい。

 

本当に高校生くらいのときはお互い大人であり大人ではない時期だったから大変だった。

今ではまあまあ仲良くしている。

 

僕が読書するようになってから、毎年誕生日には本が送られてくるし、僕も本をプレゼントしている。

サラバ!においても、最終的に姉と弟の関係性がハッピーになっていったが、

大人になってみないと姉のすごい部分や姉の感性は理解できなかったように思う。

 

すべてのことは起こるべくして起こっている。

そう捉えることができるのなら、

僕は姉の弟として生まれるべくして生まれていて、

サラバ!に関しても今読むべきタイミングだったからこそ読んだのだと思った。

 

小さい頃から常に思っていたことがある。

それが「俺は俺だ」「俺はどこまでいっても俺でしかない」

ということだった。

どんなに悩んでも、辛くても、最終的にはそこにたどり着いた。

 

 

「私が信じるものは、私が決めるわ。」

「だからね、歩。」

「あなたも、信じるものを見つけなさい。あなただけが信じられるものを。他の誰かと比べてはだめ。もちろん私とも、家族とも、友達ともよ。

あなたはあなたなの。

あなたはあなたでしかないのよ。」

貴子から歩にこの言葉が発せられたときには、涙がこぼれた。

結局のところ、僕は僕でしかない。

他の誰かが僕に代わってなにかしてくれたら楽なんだけど、そんなことはありえない。

いつだって、自分は自分で、自分の決断は自分でしていかなきゃならない。

他の誰かに決めてもらうことはあってはいけない。

自分の人生に責任をもって、自分の決断には他の誰の干渉も許さない。

信じるものをもつというのは、決断するということ。

自分が信じるものは自分で決める。

 

あらためて、自分は自分でしかない。俺の人生は俺が決める。

このことに気づかされた。

そういう剣のような意志を持っていかなければならない。

 

最終的に、貴子は御神木のような美しさを兼ね備えた女性に成長した。

ある意味、それは過去の浄化でもあり、鎮魂でもあるのだと思った。

 

僕が背負っている痛ましい過去を鎮魂して、浄化して、美しい生き方を貫いていけたらと思う。

 

 

サラバ! (上)

サラバ! 中: (小学館)

サラバ! 下: (小学館)