こんにちは。
おざきです。
今回は、ミステリー好きにオススメの小説「三月は深き紅の淵を」を紹介していこうと思います。
三月は深き紅の淵を は著者が恩田陸さんで、非常に面白かった。
ミステリー好きにはたまらないような内容だったので、共有できたら幸いです。
著者の読書論がふんだんに書かれている
まずこの本の良いところは、著者の読書に対する考え方、読書に対する見方が描かれている点。
しかも、その見方に対する周りの反応も書かれていたりして、読書好きな人は共感できて面白いと思う。
例えば、以下のシーン
「僕は、今の時代、本読む人間は昔よりも憎まれているんじゃないかって気がするんです」
「そいつは聞き捨てならないねえ。どうして?」
「うーん。日本の社会全体、本読む人間には冷たいんですよ。本読むのって孤独な行為だし、時間もかかるでしょ。日本の社会は忙しいし、つきあいもあるし、まともに仕事してるサラリーマンがゆっくり本読む時間なんてほとんどないじゃないですか。本なんかよませたくないんだな、って気がする。例えば僕が上司に、飲み会を断るとしますよね。『今日は早く帰って、こないだ並んで買ったゲームやりたいんです』って断る。上司は苦笑するでしょうけど、『しょうがない奴だな。あいつオタクなんですよ』で済ますでしょう。でも、『今日は早く帰って本読みたいんです』って断ったとしたらどうです?上司の心中は穏やかじゃないだろうし、きっと僕に対して反感を持つでしょうね。みんなTVゲームは画一的で、本人の思考が入る余地がないことを知ってるから安心できる。でも、本読む奴というのは、みんなと違うこと考えてる、一人で違うことやってる人間だとみなされる。上司から見れば、『あいつ、俺の知らないところで俺に黙って何考えてるんだろう』って風になるんでしょうね。今、価値観の多様化とか言ってるけど、僕は完全に二極化するんじゃないかと思います。中略」
96ページより引用
もっと続くんですけど、省略しました。
気になる人は読んでみてくださいね。
で、読んでみるとわかると思いますが、かなりしっかり練られている。
考え方が練られているのです。
たぶんこういうことを日常から考えているから、こんなことが書けるのだと思いますし、こういう考えをしっかり言葉にできるのが恩田さんのすごいところでもあり、好きなところです。
ちゃんと人物たちに思想がある。自分なりの考え方をもっている。だから感情移入しやすいのだと思います。
こんな文章書けるようになれたらなあといっつも思ってしまいます。
四部構成の独立した話がどれも面白い
この本は、四部構成で、一つの小説をめぐる話である点では一致しているのですが、それぞれの話は独立した話になっています。
第1章は老人と新入社員の話
第2章は二人の女性編集者の話
第3章は高校生の話
第4章は回転木馬の話
になっています。
僕個人としては、第一章と第二章が好きです。
第四章は第四章自体が回転木馬のようにぐるぐる回っていてよくわからなくなりましたが、面白いとは思います。
第三章は、少しホラー的な面があってスリルもありつつって感じでした。
どの話も面白いので、オススメです。
まあ、ネタバレはあんまりしない主義なので、実際に読んでみることをオススメします。
登場人物それぞれの人間性が豊か
先ほども書きましたが、登場人物それぞれに、自分の思想や哲学のような自分なりの考え方があるので、非常に人間性が豊かなんですよね。
多様な視点を持てる小説だと思います。
第一章は、自分が老人という人生の大先輩と語り合っているような気分になりますし、第二章は、違ったタイプなのになぜかわかりあえそうな二人の女性編集者に対して嫉妬しますし、第三章は、「あれ?『三月』はどこにいった?」と思いながらも、絶対これ関係あるし、純粋にホラー小説としても面白いからどんどん読んでしまえるし、第四章は、「ん?」って何回かなるけれど、なるほどこの章自体が回転木馬なのね。ってわかってきたら面白いですし。
こんな感じで、各章で全く違う感想になるのがこの小説の面白さでもあるなと思います。
恩田さんが描く人間像ってどこかにいそうで、でもなかなかいないような人な感じがするので、なんかよくわかるし、なんかちょっぴりわからない部分もあって、それがいいなと思います。
最後に
はい。
この小説はめちゃくちゃ面白いのでぜひ読んでみてください。
なかなか書店では見つからないかもしれないので、アマゾンのリンクを一応張っておきます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
良いお年を!!
では。